国際演劇交流セミナー2022  韓国特集 広報部《D 》報告

韓国の文化政策、韓国の芸術(演劇)教育を知ろう

韓国では、2004年からの「文化芸術教育」の推進により、「学校における芸術教育」 として全国の学校や施設に、演劇、舞踊、映画、韓国伝統音楽など8つの分野の専門性に応じて「芸術指導員」と呼ばれるアーティストが派遣されています。

10年後の2014年には7000校以上の学校に5000人近いアーティストを派遣するまでになりました。この異例の芸術教育の推進、そして、前例のない「芸術指導者の派遣」システムは、諸外国の関心も集めているようです。 そこで今回の韓国特集では、今までとは少し視点をかえ、「芸術(演劇)教育」から韓国を知り、その取り組みを研究者と実践者から学び、今までとは違った角度から韓国の演劇と文化の理解につなげること、そして、日本ではまだ途上である「芸術(演劇)教育」活動に活用していくことを目的に企画しました。

韓国の文化政策の研究者である閔 鎭京(ミン・ジンキョン)氏には『韓国の文化政策のいきさつと取り組み』について、また、韓国で「芸術(演劇)教育」を実践されている劉 恩禎(ユ・ウンジョン) 氏と安 鏞世(アン・ヨンセ)氏には、『韓国の芸術(演劇)教育の現状』のレクチャーをお願いしました。

通訳・翻訳は、日本語教育や多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」 (PCAMP)など多様な国際プロジェクトを運営する公益財団法人国際文化フォーラム (TJF)より沈 炫旼 (シム・ヒョンミン)さん。通訳補には、日本で演劇活動をされながら演劇教育にも活動を広げる金 恵玲(キム・ヘリョン)さんにお願いしました。

いざ、始めてみると、想定を超えた発見と驚きがありました。

セミナー1日目【講座 A】閔 鎭京(ミン・ジンキョン)氏のレクチャーは、韓国の芸術(演劇)教育の歴史。国と地域財団が主導して取り組む国家政策として推進していることを知りました。

セミナー2日目【講座 B】劉 恩禎(ユ・ウンジョン)氏のレクチャーでは、韓国のティーチング・アーティスト/ TA(日本では、ファシリテーターや進行役と呼ばれます)の育成プロセスを知りました。また、演劇大学を経て、教育大学大学院に進む過程があることが示されました。加えて、学校の教師たちとの共同研究を通じて、芸術を活用した教育課程を開発し運営するシステムが実際にあることを知りました。

セミナー3日目【講座 C】安 鏞世(アン・ヨンセ)氏のレクチャーは、多文化共生に向けて韓国の芸術(演劇)教育がどのように思案し実践しているかを示してくれました。また、芸術(演劇)教育が ODA のひとつとして活用されている事例も紹介してくれました。

韓国の芸術(演劇)教育の歴史と政策は、予想を超える圧倒的な情報量で、私たちの身体におとしていくには多くの時間と労力を要すると感じます。

また、ファシリテーター育成と多文化共生については、いつでも社会の要請に応えられる準備が必要だと感じました。

これらを踏まえ、継続的に、韓国との情報・意見交換を図っていくことが重要だと感じています。

加えて「教育」というキーワードで、広く研鑚の場を作り、公共劇場や統括団体と連携していく可能性も感じました。

「芸術(演劇)教育」(韓国では、俳優や演出家を養成する演劇教育と混同しないように「教育演劇」とも呼ばれる)を、これからの日韓演劇交流の柱のひとつとして推進していくことも視野に入れていこうと考えています。 その実現のために、新たなネットワークを紡いでいけると嬉しく思います。

 報告者:柏木俊彦
(国際演劇交流セミナー2022韓国特集 実行委員)


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