国際演劇交流セミナー2021
エストニア特集報告

『エストニア演劇を知る~歴史と現在~』

・日程: 2021年10月28日(木)~10月30日(土)

・講師: ティート・オヤソー(Tiit Ojasoo)
     エネリース・センペル(Ene-Liis Semper)

実行委員:山上 優 / 柏木俊彦 / 菅田華絵

「国際演劇交流セミナー」は長く継続的に行われてきた協会事業であり、これまで数々の世界の国々の演劇人に出会う機会をつくってきました。新型コロナ感染症という未曾有のパンデミックが出現した2020年、その猛威の中、次年度の企画を提案するのに選んだ国はエストニアでした。人口およそ130万人、東京の10分の1。小さな国ながら世界的に有名な無料通話ツールの「Skype」を生み出したIT先進国。海外との通話を無料にしたスカイプの出現は革新的でしたし、個人的にも大変お世話になりました。電子カルテや個人認証カードの実現に向けて、日本政府からもその先駆的技術の視察団が派遣されたという話題にも興味を引かれていました。そして全く未知の国、エストニア。2020年8月、初代の駐日大使を務められたヘイキ・ヴァッラステさんとコンタクトを取ることができ、お話を伺いました。奇しくも2021年はエストニア・日本友好100周年に当たる年だということで思いのほか長い歴史があることも知りました。パンデミックの下、演劇のオンライン配信が始まりIT技術はますます私たちの身近に様々なツールを生み出しています。
 現在は母国にいらっしゃるヴァッラステさんに、エストニアの新進気鋭の舞台演出家を紹介して欲しいとお願いし、この人の他にはいないという太鼓判でご紹介いただいたのがシアターNO99のTiit Ojasooティート・オヤソー氏でした。9月からはティートと直接メールのやり取りが始まりました。毎回お互いの国の感染症の動向を報告し合い、注視し、当年の企画が次々とオンライン実施に決まる中、翌年は本来の交流セミナーがリアルで実施できることを祈りつつの話し合いが続きました。日本のワクチン接種の始まりが欧州よりだいぶ遅れていたことや、感染者の動向に両国間でかなりの差異がある状況が続きました。シアターNO99の共同芸術監督で多彩な芸術家としての顔を持つEne-Liis Semperエネリース・センペル氏も企画に加わっていただき、ティートは是が非でも対面実施でセミナーを実現することに情熱的でした。しかし、企画は常に「プランB」の準備が必須条件でした。最終的には、日本に無事入国出来ても、14日間の隔離が緩和される見通しが立たないということで本年度はオンライン実施の選択を余儀なくされました。

 エストニアは英語圏外での英語能力が世界屈指の国でもありますが、通訳者の選定にもお二人の講師は拘りがあり、自分たちの活動が正しく日本の演劇人に紹介されるようにと、エストニア語⇔日本語の通訳者であること、日本側からは日本語を母国語とする人が求められました。そのような条件に該当する方が見つかったことはとても幸運でした。オンライン実施が決まったセミナーは、日数を三日間としたレクチャー中心のプログラムに調整し直しました。休憩を挟み各日3時間半、ロシアに隣接する北欧の国エストニアの演劇事情を、彼らの国々をまたぐ広範囲の活動を、とことん紹介、語っていただこうという趣向にしました。タリン市内の講師2名と通訳が一室に、東京は実行委員、テクニカルサポート、パネリストが護国寺のスタジオ一堂に会し2会場をオンラインで繋ぎました。初日、Zoomの参加者数は36人をカウントしていました。参加者には事前に映像資料のリンクをお渡しし、講師の指示のもと同じタイミングで指定した資料映像を視聴していただく、という初めての方法を試みました。

画面共有では正しく確実に視聴できないかもしれない懸念への対策でした。何もかもが初めてのオンラインセミナーの運営でしたが、対面実施を前提とした今回の「エストニア特集」が無事開催、終了できましたことをご報告申し上げます。

報告者:山上 優
(国際演劇交流セミナー2021エストニア特集 実行委員)


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