ミュージカルをやってみよう
~知識編~

演劇入門

ミュージカルの誕生

アメリカのブロードウェイで1927年に初演された「ショー・ボート」が、現在のミュージカル形式の起源と云われています。もちろん、それまでにもミュージカルと名付けられる作品は存在しましたが、この「ショー・ボート」は、脚本・作詞がオスカー・ハマースタイン2世、作曲がジェローム・カーンで、小説を原作として人種問題を取り上げ、アメリカ社会を鋭く描き、物語と音楽を調和させた全く新しい舞台でした。主人公の黒人荷役のジョーが歌う「オールマン・リバー」は大ヒット。1842年、ビクトリア劇場がブロードウェイに誕生してから、ミュージカル誕生までの85年間には、オペラやオペレッタ、ヴォードビル、曲芸、レビューなどが上演されました。「ヤンキー・ドゥ―ドゥル・ダンディー」で著名なジョージ・M・コーハンをミュージカルの起源とする説もありますが、まだ現在のミュージカル形式には届かず、さまざまな芸や話術で人気を博したヴォードビルや、長身美人コーラスに派手な衣装を着せた豪華絢爛なショーで一世を風靡した「ジーグフェルド・フォーリーズ」のレビューも、ミュージカルとは云えません。しかし、これらはすべて、現在のミュージカルに影響を残しています。今でもブロードウェイでミュージカルを観劇すると、笑いに包まれるミュージカルが多く、セリフやキャラクターで笑わせるヴォードビルの特色が感じられ、また、大勢のダンサーによる一糸乱れぬラインダンスやタップダンスにも、レビューの特色がみられます。こうして、寄席芸のヴォードビルや豪華絢爛なレビュー、そこへドラマティックなストーリーが加わり、ミュージカルの誕生となりました。また、1920年代に発明されたトーキーが普及し始め、ミュージカル映画製作が始まったのもこの頃です。実はこの「ショーボート」の初演の年、日本では宝塚歌劇団がレビュー「モンパリ」を上演しています。

ミュージカルと禁酒法

1918年に始まった第1次世界大戦でアメリカは好景気となり、人々は劇場に集まりにぎわいます。1920年、禁酒法が成立。ブロードウェイの界隈には、2000軒の劇場が立ち並び大歓楽街になります。一方禁酒法はギャングの横行を生み、次第にアメリカ社会を蝕んでいきます。1929年、突然世界恐慌となり、ミュージカルも壊滅的な状況に陥ります。

ミュージカル黄金期

1945年、第2次世界大戦が終わると、勝利に沸くアメリカでは、再びブロードウェイに人々が溢れます。この黄金期の特徴は、ミュージカル映画を世界中に普及させたことです。フレッド・アステアなど世界中を巻き込むスターを輩出しました。

世界へ広がるミュージカル

ブロードウェイから世界へ広がったミュージカルは、イギリスでは「レ・ミゼラブル」などの名作ミュージカルが世界から賞賛され、ドイツやフランス、オーストリアなど多くの国々でミュージカルが制作されるようになりました。

ミュージカルのもう一つの大功績

ブロードウェイが世界のショービジネスシステムを確立したことです。ミュージカルの輸出と共に、ショービジネスを世界へ広げた功績は大きく、現在多くの国がブロードウェイ方式の契約でエンターテイメント業界を運営しています。形になりにくい文化芸術の作品や仕事を著作権などで確定させる画期的なものと世界で賞賛されました。

一般社団法人 日本演出者協会広報部 篠﨑光正

トップ画像《ミュージカル「アニー」制作:日本テレビ 演出:篠﨑光正(初演1986年~2000年)》

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