若手演出家コンクール2024 優秀賞受賞者インタビュー〈広報部〉

深海哲哉(グンジョーブタイ) 『 書込み訴え 』

―― まずは本番を終えての感想を教えてください。
深海
本番までかなりタイトなスケジュールでいろいろ仕込をして余裕がなかったっていうのもあって、自分がいま下北沢で演劇をやってる実感がないまま本番突入して、それで2日目終わって最後に舞台に一礼したときにやっと実感がわいてきて、実はちょっと感極まるものがありました。
――コンクールに応募した動機を教えてください。
深海
実は僕、最初はコンクールの存在を知らなくて、でも2年前に亀尾さんが最優秀を受賞されたってことを知り、それで去年、最優秀授賞記念公演『走れ!走れメロス』を下北沢で観て、それがすごく面白くていいなーって思って、それでよし自分もって思ったことがきっかけです。ちなみに亀尾さんとは広島の「劇王」で繋がって、その縁で今回、戯曲を依頼しました。
―― そもそも劇団をはじめたきっかけは?
深海
映画に出たいと思って芸能事務所に入って、でもそこがなくなってどうしようかと思ってたんですが、そこで演技を教えてくれてた先生が事務所とは関係なかったんで、そのまま引き続きレッスンしてくれて、それでそのまま俳優を続けたくて劇団をつくりました。だから僕は俳優しかやったことなかったんですが、劇団つくったときに演出やる人がいなくて、でも代表だからってなりゆきで演出をするようになりました(笑)。 だから最初はよくわかんなかったです。演出というものが。そのときは戯曲を成立させるみたいなことしか考えてなくて、それでもいろんなことが面白くできそうだなって思いはじめていたときに大きく意識が変わったきっかけが2017年に演出家のための「ディレクターズワークショップ」っていうのに参加して、それがすごく面白くて、というのも「演出って自由にやっていいんだ」ってことに気付かされたからですね。
―― 今回の作品『書込み訴え』に込めた想いを教えてください。
深海
太宰治の『駆込み訴え』が個人的に好きで、その現代版をやりたいって思ったことが始まりです。つまり梅田(=出演者)がその加害者となりうる僕をパワハラなのかセクハラなのか、そういったもので訴えて炎上させるみたいなことをベースにしようと思って、それを亀尾さんに相談したら「わかりました。書きましょう」って言ってくれたんです。

―― 今回、創作する上で難しかったこと、チャレンジしたことはありますか?
深海
実は今回、亀尾さんにお願いしたのが2月に入ってからで、なのでどういう世界観で、どういう結末かというのがふわっとしてる中で稽古をすることが大変ではありました。台本がないときは、亀尾さんのほかの戯曲を使って台詞回しをしたり、『駆込み訴え』を読んで感想を言い合ったり、あと今回、モノローグをやりたいっていうのが漠然とあったので、ひとり芝居の戯曲に慣れる、というような稽古をやったりしました。
―― 作品を立ち上げていく中で演出としてこだわった部分は?
深海
一番は芝居をしない、つくらないですかね。なぜなら亀尾さんに戯曲をお願いするにあたって、3人それぞれの生い立ちとか訴えたいこととかいろんなことをヒアリングされて、そこで出てくるものはやっぱり自分の言葉なので、台詞として言うのではなく、ちゃんと自分の言葉として言えるようになろうって思って。もうちょっと加えると、お客さんにも芝居を観ているっていう感覚をちょっと今回は持たせないようにしたかったっていうのがあります。

―― 最後に。今後の展望を教えてください。
平田
自分たちのチカラで下北沢で公演をするっていうのが次の目標です。あとやっぱり全国回ってみたいです。三重とか仙台とか演劇の盛んな地域で。 それと今回すごく嬉しかったのは、4人の中のひとりにINAGO-DXの武田くんがいたことです。実は彼、僕が初舞台をとき主役やってた人で、年齢が僕と一緒なんです。今回、競い合うことにはなるんですが、お互いいい演劇をつくろうってなったことがすごくよかったです。
聞き手 日本演出者協会 広報部 中村ノブアキ
