追う背中。すがる背中。
コラム

先日演出を担当する公演がありました。
パッケージングは、演出家が変わる3週間公演。
つまり私が担当する真ん中の週以外は別の演出家が同じ作品を演出するのです。
しかも別の演出家というのは私の師匠にあたる方。
事情があり場当たりにもその方はいたわけですが、
これが緊張しないわけがない。
何故なら、1日に多くのことを決めなければならない日に正解を持っている人がすぐ近くにいるからです。
私が思うものよりも、もしかしたらよりよい答えを持っていらっしゃるかもしれない……。
そもそも正解なんてありませんが、弱い私にはよくない葛藤が生まれます。
もちろん師匠は何を言うでもなく、ただ見守ってくれていました。
こういう時私はいつまでたっても自分は子供だなと思います。
師匠の背中を追い越したいと思っているのに絶対に追い越せないと思う自分もいる。
多分追い越せないと思う自分は甘えなのでしょうね。
実際に追い越せるかどうかは置いといて追い越せなかった時の保険をかけている。
そんなとき飛び込んできたのは新社会人の退職代行依頼についてのニュースです。
4月上旬現在で依頼する新社会人が100人を超えたとか……。
退職の理由は“提示されていた契約と違った”や、“制服が似合わなかった”、“怒鳴られた”等、どちらがとは言いづらい内容です。
ただ、他人事ではないことは確か。
入社するまでは意気込んでいたものの、うまくいかなくなったとき、何も言わない背中よりも寄り添ってくれる背中の方が頼りやすい。
気が付けば私も導く側に立つことが多くなりました。
追いたいと思ってもらえる背中になりたいと思いつつ、果たして今求められている背中は追う背中なのか、すがれる背中なのか……。
もしかしたら、頑丈な背中よりも、支える人がいないと曲がってしまうくらいの背中の方がいいのかもしれませんね。
平松香帆
